2025年(令和7年)11月11日(火)、第59回通関士試験の合格発表が財務省関税局より行われました。
受験された皆様、本当にお疲れ様でした。
今年の試験結果は、全国平均合格率が15.1%となり、昨年度の12.4%から大きく回復しました。
しかし、この「合格率の回復」という数字だけを見て「易しくなった」と判断するのは早計です。
今回の発表で最も注目すべき重要なポイントは、受験者の間で動向が注目された最難関科目「通関実務」を含め、全3科目で合格基準点の引き下げ(補正措置)が一切行われなかったことです。
この記事では、発表された公式データを基に、2025年度通関士試験の結果を徹底的に分析します。
- 合格率15.1%の「本当の中身」とは?
- 昨年度(2024年)の試験と何が決定的に違ったのか?
- この結果が、2026年度以降の試験にどのような影響を与えるのか?
これらの点を、初学者の方にも分かりやすく噛み砕いて解説していきます。
2025年度(第59回)通関士試験 合格発表の概要
まずは、財務省関税局から発表された公式データ(全国合計)を見てみましょう。
昨年度(第58回)の公式データと比較しています。
| 区分 | 2025年度(第59回) | 2024年度(第58回) | 前年比較 |
|---|---|---|---|
| 願書提出者数 | 8,205人 | 8,024人 | +181人 |
| 受験者数 | 6,322人 | 6,135人 | +187人 |
| 合格者数 | 954人 | 759人 | +195人 |
| 合格率 (全体) | 15.1% | 12.4% | +2.7 Pts |
(出典:財務省関税局「第59回通関士試験の結果について」及び「第58回通関士試験の結果について」)
昨年度の試験があまりに厳しかったため、受験者離れが心配されましたが、受験者数は微増しました。資格の需要は引き続き高いことがわかります。
そして、合格者数は954人となり、昨年の759人から195人も増加しました。
それに伴い、合格率は15.1%と、昨年の12.4%から2.7ポイント上昇しました。
この数字だけを見ると、試験が易しくなり、合格しやすくなったように見えます。しかし、通関士試験の難易度は、この「全体の合格率」だけでは測れません。
【重要】合格率15.1%の「中身」を徹底分析
なぜ、全体の合格率だけを見てはいけないのでしょうか。それには2つの理由があります。
本当の難易度は「13.9%」だった
通関士試験は、実務経験などによって一部の科目が免除される制度があります。
私たちが注目すべきは、免除なしで3科目すべてを受験する「全科目受験者」のデータです。この層には、初学者や実務経験の浅い受験者が大半を占めるためです。
▼ 2025年度 受験区分別の合格率
| 区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 全科目受験者 | 5,584人 | 777人 | 13.9% |
| 2科目受験者 | 561人 | 58人 | 10.3% |
| 1科目受験者 | 177人 | 119人 | 67.2% |
| 合計 | 6,322人 | 954人 | 15.1% |
(出典:財務省関税局「第59回通関士試験の結果について」)
この表が示す通り、「全科目受験者」の実質的な合格率は13.9%でした。これが、多くの受験者にとっての「本当の難易度」です。
では、なぜ全体の合格率が15.1%に引き上げられるのでしょうか?
それは、「1科目受験者」の合格率が67.2%と非常に高いためです。この層は、長年の実務経験などで2科目が免除され、最難関の「通関実務」だけに集中できるベテラン受験者が中心です。
この177人という少数精鋭の集団が平均合格率を押し上げているため、一般の受験者が「15.1%」という数値を鵜呑みにするのは危険です。
実質的なハードルは「13.9%」であったと認識することが重要です。
2024年度(昨年)との比較:難易度は「正常化」へ
とはいえ、この「13.9%」という合格率は、決して悲観的な数字ではありません。
昨年度(2024年)の全科目受験者の合格率は11.2%(受験者5,451人中、合格者609人)でした。
それと比較すると、2025年度は2.7ポイント上昇しており、難易度が「適正な水準」へと戻ってきた(=正常化)と言えます。
2024年度が「異常な難化」だったとすれば、2025年度は「適切な学習を積めば、きちんと合格できる試験」へと再調整された年だったと評価できます。
2025年度試験の最大の焦点:合格基準に「補正なし」
さて、ここからが今回の合格発表で最も重要な分析です。
それは、合格基準点の運用が「厳格化」したことです。
全科目「満点の60%以上」という厳格な基準
2025年度(第59回)通関士試験の合格基準点は、以下の通り発表されました。
- 通関業法: 満点の60%以上
- 関税法等: 満点の60%以上
- 通関実務: 満点の60%以上
通関士試験は、3科目すべてでこの基準点をクリアしなければ合格できません。
ここで注目すべきは、「補正(ほせい)」が一切なかったことです。
【初学者向け】合格基準の「補正」とは?
試験問題が異常に難しかった年に、受験者の得点があまりに低くなってしまった場合、試験の公平性を保つために合格ラインを「満点の60%」から引き下げる(例:55%以上にする)救済措置のことです。
昨年度(2024年)は、この「補正」が行われました。
2024年度(昨年)との決定的な違い
昨年の2024年度試験では、「関税法等」の難易度があまりに高すぎたため、合格基準が60%から55%へと引き下げられました。
(通関業法と通関実務は60%以上のままでした)
この措置により、「自己採点では関税法等が58%だったけれど、救済されて合格できた」という受験者が存在しました。
しかし、2025年度は、一切の「安全網」がありませんでした。
これは、試験の主催者(税関)が「今年の試験問題は、60%の得点が取れない受験者を合格と認めるほど難解ではなかった」と判断したことを意味します。
結果として、2025年度の試験は、
- 合格率は15.1%に回復(正常化)
- 合格基準は一切の救済なし(厳格化)
という二つの側面を持つことになりました。
合格率は上がりましたが、合格のハードルそのものは、「たとえ1科目でも59%以下なら即不合格」という、非常に厳格で容赦のない採点基準が適用されたのです。
SNSでの受験者の反応(速報)
この厳格な結果を受け、Xなどでは受験者から様々な声が上がっています。
▼ 合格者の声
- 「合格しました!自己採点通り。通関実務で6割を死守できて本当に良かった」
- 「全科目受験13.9%の壁は厚かったけど、突破できた。補正がなかった分、胸を張れる合格です」
- 「去年の関税法みたいな救済がなかったから、ギリギリの自己採点の人は厳しかったかもしれない」
▼ 不合格だった方の声
- 「業法と関税法は余裕だったのに、通関実務が58%で不合格だった…。今年に限って補正がないなんて…」
- 「合格率が15%に上がったと聞いて期待したが、自分はダメだった。やはり厳しい試験だ」
昨年の2024年度は、理不尽な問題(特に関税法等)への「怒り」や「混乱」の声が多く見られました。
対して今年は、「問題は公正だったが、基準は厳格だった」という、結果に対する納得(あるいは、あと一歩だった悔しさ)の声が主流となっている印象です。
まとめ:2026年度(令和8年度)の通関士試験に向けて
今回の第59回(2025年度)通関士試験の結果が、未来の受験者に与える教訓は非常に明確です。
まず、合格した皆様、本当におめでとうございます。特に今年は「補正なし」という厳格な基準をクリアした、自信を持って誇れる合格です。
そして、残念ながら今回結果が伴わなかった方も、決して落ち込む必要はありません。
今回の結果から得られた、次年度への重要な「道しるべ」が2つあります。
- 難易度は「適正化」された。正しい努力は報われる。
2024年度の異常な難化から脱し、全科目受験者の合格率は13.9%まで回復しました。これは、適切な戦略で十分な学習時間を確保すれば、決して突破できない数字ではありません。 - 「補正頼み」の戦略は破綻した。
これが最も重要な教訓です。「もしかしたら難しすぎて補正がかかるかも…」という淡い期待は、一切捨てるべきであることが確定しました。昨年の補正はあくまで例外的な措置だったのです。
2026年度の試験に向けて求められるのは、「全3科目で、確実に60%以上を取り切る、穴のない知識」です。
最難関の「通関実務」で6割を確保するのはもちろん、他の2科目でも絶対に苦手分野を作らない。
通関士試験は、3つの高いハードルすべてを例外なくクリアすることを要求する、厳格な国家試験であることを、2025年度の結果は改めて私たちに示してくれました。
▼ 2026年度の合格を目指す方へ
今回の結果を踏まえ、次年度の受験を検討される方は、まずは「通関士試験の全体像」と「本当の難易度」を改めて確認し、戦略を練ることから始めましょう。
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