通関士試験合格後の「実務講習」は必須?「確認試験」との違いも徹底解説

通関士試験合格後の「実務講習」は必須?「確認試験」との違いも徹底解説 キャリアと実務

通関士試験の合格、誠におめでとうございます。
難関を突破し、次のステップに進もうと情報収集を始める中で、

「合格したら、まず『通関実務講習』を受ける必要がある?」
「現役通関士が受ける『確認試験』というものがあるらしいけど…」

といった情報に触れ、混乱していませんか?

この記事では、そんなあなたの疑問に、税関や日本通関業連合会(日通連)の公式情報に基づいて、正確にお答えします。

結論から申し上げます。
あなたが今、合格者として義務で受けるべき「通関実務講習」や「通関士確認試験」という名称の制度は、公式には存在しません。

それらは、合格「前」の「受験対策講座」や、現役者が「スキルアップ」のために受ける「任意研修」との完全な混同である可能性が極めて高いです。

この記事では、その「誤解」の正体を徹底的に解明し、合格したあなたが本当に取るべき「真のネクストステップ」を解説します。

▼ まず、通関士登録の全体像(手続きの流れ)を知りたい方は、こちらの記事からご覧ください。

結論:合格者が取るべき「真のロードマップ」

通関士試験に合格しただけでは、法的に「通関士」を名乗ることはできません。
税関の公式見解に基づくと、合格者が「通関士」として登録されるまでの「真のロードマップ」は以下の通りです。

  1. Step 1: 通関業者へ「就職」する
    • 通関士登録の申請は「個人」ではできず、「勤務先の通関業者」が行います。したがって、通関業者に就職することが全てのスタートラインです。
  2. Step 2: 「従業者」として実務経験を積む
    • 合格後すぐには登録されません。まず通関業者の「従業者」としてOJT(実務研修)などを通じて「実務経験」を積みます。
    • 税関は、この「実務経験」をもって、その人が通関書類の審査を適正に行えるかを判断します。
  3. Step 3: 企業が「通関士登録」を申請する
    • 企業が「実務経験が備わった」と判断した時点で、企業が税関(財務大臣)に対し、あなたを「通関士」として登録するよう「確認(登録)申請」を行います。

つまり、あなたが探していた「講習」とは、特定の座学研修ではなく、このStep 2の「実務経験(OJT)」のことを指している可能性が非常に高いのです。

誤解①:「通関実務講習」の正体

では、なぜ多くの方が「通関実務講習」という言葉にたどり着くのでしょうか。
その正体は、主に以下の2つとの混同です。

正体A:合格「前」の「受験対策講座」との混同

財務省の関連団体である(一財)日本関税協会は、「通関実務 集中対策講座」といった講座を開催しています。
しかし、その対象者をよく見ると、「合格者」ではなく「受験生」です。

  • 目的: 通関士試験の最難関「通関実務」科目の合格点を取るため。
  • 対象: 受験生(特に実務科目が苦手な方)。

これは合格後の登録要件では一切なく、合格を目指すための「任意(有料)の受験対策講座」です。名称が似ているため、合格者が「合格後に受ける実務の講習」と誤認しているケースです。

正体B:登録要件である「実務経験(OJT)」との混同

これが最も本質的な誤解です。
前述の通り、税関が通関士登録の際に事実上要求するのは、お金を払って受ける座学の「講習」ではなく、通関業者に就職し、給与を得ながら学ぶ「経験」です。

誤解②:「通関士確認試験」の正体

次に、「通関士確認試験」という制度の正体を解説します。
結論から言うと、この名称の試験も公式には存在せず、「通関士専門研修」との混同であると考えられます。

正体:「現役者向け」の「任意研修」との混同

通関業界の全国団体である日本通関業連合会(日通連)は、現役の通関士向けに「通関士専門研修」を実施しています。

  • 目的: 現役通関士の知識向上(法改正のキャッチアップ、専門知識の深化など)。
  • 対象: 現役の通関士(実務経験5年程度など)
  • 義務: 法的な義務ではなく、スキルアップのための「任意」の研修です。

これは、あなたが「合格直後」に受けるものでは全くありません。
通関士としてキャリアを積んだ数年後に、専門性を高めるために任意で受講する「継続的専門研修」です。「試験(Shiken)」と「研修(Kenshu)」という名称が混同され、誤解を生んでいると推察されます。

比較表:その「講習・試験」、あなたが受けるものですか?

あなたが混同していた制度と、合格者が本当に必要なステップの違いを一覧表にまとめます。

比較項目誤解①:通関実務講習(の正体)誤解②:通関士確認試験(の正体)合格者の真の必須要件
制度の正体通関実務 集中対策講座通関士専門研修実務経験(OJT)
管轄(実施)(一財)日本関税協会(一社)日本通関業連合会財務省(税関)※登録の許認可
目的試験「実務科目」の得点力UP現役者の知識アップデート通関士登録の人的要件充足
対象者通関士試験の受験生現役の通関士(実務5年程度)通関士試験の合格者(未経験者)
タイミング試験合格通関士として実務に従事した数年後試験合格、登録申請
法的義務任意(受験対策)任意(スキルアップ)事実上必須(税関の登録実務上)

まとめ:合格者が今すぐやるべきこと

本記事の結論を繰り返します。
通関士試験の合格者が、合格直後に義務として受けるべき「通関実務講習」も「通関士確認試験」も存在しません。

あなたが今、本当に集中すべき必須要件は、通関業者に就職し、通関士登録の前提となる「実務経験」を積むことです。

合格証を手に、あなたが探すべきは「講習の申込サイト」ではなく、「通関業者の採用情報」です。それこそが、通関士としてのキャリアをスタートさせる、法的に正確な「真の第一歩」となります。

▼ 未経験から通関士への就職・転職を成功させる方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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