通関士試験に、英語という独立した試験科目はありません。そのため、英会話が苦手でも受験や合格を諦める必要はありません。
一方、実際の通関業務では、インボイス(仕入書)やパッキングリスト、船荷証券などの英文書類を扱います。最初に必要なのは、流ちょうに話す力よりも、品名・数量・価格・通貨・原産地などを正確に読み取る力です。
この記事では、試験と仕事を分けて、通関士に必要な英語力を整理します。英語が苦手で受験を迷っている人と、就職・転職に向けて何を勉強すべきか知りたい人が、自分に必要な準備を判断できる内容です。
結論|試験は英語科目なし、仕事は書類を読む力が必要
| 場面 | 英語の位置づけ | 最初に必要な力 |
|---|---|---|
| 通関士試験 | 英語という独立科目はない | 商品名や貿易書類の基本用語を問題文の中で判断する |
| 通関業務 | 英文のインボイスや運送書類を扱う | 品名・数量・価格・通貨・取引条件などを正確に読み取る |
| 顧客対応 | 勤務先や担当業務によって差がある | 日本語で確認事項を整理し、必要なら定型英文で照会する |
| 海外との直接調整 | 読み書きや会話の比重が上がる場合がある | メール、電話、オンライン会議など担当業務に合う力を伸ばす |
資格取得の段階と、就職後の実務で必要な英語を混同しないことが大切です。受験前から高い英会話力を目標にするより、まずは通関士試験の3科目を優先し、実務を見据えて書類読解を加える方が準備しやすくなります。
通関士試験に英語の独立科目はない
税関が公表する通関士試験の科目は、次の3つです。
- 通関業法
- 関税法、関税定率法その他関税に関する法律など
- 通関書類の作成要領その他通関手続の実務
英語、英会話、TOEIC、英検は独立した試験科目として設定されていません。第60回試験も同じ3科目で実施されました。試験制度の全体像は、通関士試験の日程・科目・合格発表ガイドで確認できます。
ただし、通関実務では輸出入申告に関する問題を解くため、英文の商品名や仕入書の項目に触れることがあります。問われる中心は英作文や会話ではなく、貨物の内容を読み取り、品目分類・課税価格・申告事項へ結び付ける力です。
税関の第60回通関士試験ページと第60回の公式問題ページを見れば、試験科目と実際の問題を確認できます。
仕事では英文の通関書類を確認する
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」は、通関士の仕事として、輸出入者からインボイスやパッキングリストなどの通関関係書類を入手し、品名・数量・価格等を確認して申告書を作成する流れを示しています。また、通関業務で扱う書類が英語で書かれているため、英語力も必要だと説明しています。
これは「通関士なら全員が英語で商談する」という意味ではありません。通関士の中心業務は、書類と貨物情報を法令・税率表・申告内容へ正しく結び付け、必要に応じて税関へ説明することです。勤務先、貨物、顧客、社内分業によって、英語を使う範囲は変わります。
通関士の仕事内容全体を先に整理したい場合は、通関士の仕事内容と資格の仕組みも参照してください。
英語で確認する主な書類と項目
税関の「輸入申告の際に必要な書類」では、仕入書、包装明細書、船荷証券・海上運送状・航空貨物運送状、運賃明細書、保険料明細書などが挙げられています。貨物によっては、他法令の許可・承認証や原産地関係書類も必要です。
| 書類 | 主に確認する内容 | 英語学習のポイント |
|---|---|---|
| インボイス(仕入書) | 売手・買手、品名、数量、価格、通貨、番号、発行日など | 商品名と金額だけでなく、単位や通貨を取り違えない |
| パッキングリスト | 梱包数、内容、重量、荷姿、記号・番号など | 個数、正味重量、総重量の違いを確認する |
| B/L・Sea Waybill・AWB | 荷送人、荷受人、船舶・航空便、積出地、到着地など | 運送書類ごとの略語と役割を対応させる |
| 原産地関係書類 | 原産国、品目、原産性に関する記載など | 協定・貨物ごとに必要書類や記載方法が異なる点に注意する |
| 商品資料・契約書 | 材質、用途、製造工程、値引き、ロイヤルティー等 | 品目分類や課税価格の判断に必要な箇所を拾う |
英語を日本語へ一語ずつ訳すことよりも、「申告に必要な情報がどこに書かれているか」「複数書類の数字と内容が一致しているか」を確認できることが重要です。
公式の書類例と制度は、税関「輸入申告の際に必要な書類」、仕事内容はjob tag「通関士」で確認できます。
必要な英語力は担当業務で変わる
| 担当業務の例 | 英語を使う場面 | 優先したい準備 |
|---|---|---|
| 通関書類の作成・審査 | インボイス、パッキングリスト、運送書類、商品資料の確認 | 貿易用語と書類項目の読解 |
| 輸入者・輸出者との国内調整 | 不足資料や確認事項を日本語で整理し、顧客へ照会 | 通関知識、要点整理、正確な日本語説明 |
| 海外拠点・海外顧客との連絡 | 英文メール、電話、会議、追加資料の依頼 | 読み書きに加え、担当範囲に応じた会話力 |
| 貿易事務・物流業務を兼務 | 受発注、船積み、納期、運賃、決済などの連絡 | 通関以外も含む貿易実務の語彙 |
「通関士に必要なTOEICスコアは一律に何点」とする公的な基準は確認できません。資格試験の合格条件にもTOEICや英検は含まれていません。採用時の語学条件は企業と求人によって異なるため、応募先の仕事内容・必須条件・歓迎条件を個別に確認してください。
英語が苦手な人の準備手順
1.受験中は3科目の学習を優先する
英語が不安だからといって、資格試験対策とは別に英会話学習へ多くの時間を割く必要はありません。まず通関業法、関税法等、通関実務の合格基準を満たす準備を進めます。通関実務の過去問で出てきた商品名や書類項目を、その都度確認する方法なら試験対策と両立できます。
2.書類の項目名と略語を覚える
Invoice、Packing List、Quantity、Unit Price、Currency、Country of Origin、Gross Weight、Net Weight、Shipper、Consigneeなど、書類上の項目と意味を対応させます。単語帳だけでなく、実際の書類レイアウトのどこに何が書かれるかを見る方が実務に結び付きます。
3.数字と単位を含めて照合する
通関書類では、英単語を知っていても、数量、重量、通貨、単価、合計額を取り違えると申告内容に影響します。インボイスとパッキングリスト、運送書類の商品情報が一致するかを確認する練習が有効です。
4.応募先の業務に合わせて追加する
海外とのメールや会議が多い求人なら、英文メールや会話を追加します。国内顧客対応と書類審査が中心なら、まず読解と通関知識を優先します。求人票だけで判断しにくい場合は、面接で「英文書類の割合」「海外との直接連絡の有無」「入社後の研修」を確認してください。
英語力を含めた向き・不向きの確認
- 英文を見ること自体には抵抗がなく、必要な項目を丁寧に探せる
- 数字・単位・書類間の違いを確認する作業が苦にならない
- 分からない商品や表現を調べ、根拠を残せる
- 不明点を放置せず、顧客や社内担当者へ確認できる
- 法令や手続の変更に合わせて学び直せる
これらに当てはまるなら、現在の英会話力だけで通関士への適性を否定する必要はありません。反対に、英語が得意でも、数字や法令、書類の整合確認を避けたい場合は、仕事内容との相性を慎重に確認した方がよいでしょう。
仕事内容との相性は、通関士に向いている人・向いていない人でも確認できます。
よくある質問
英語ができなくても通関士試験に合格できますか?
英語は独立した試験科目ではありません。ただし、通関実務で商品名や書類上の英語に触れる可能性があるため、過去問に出る範囲の用語は確認しておくと安心です。
通関士になるにはTOEICが必要ですか?
通関士試験の受験・合格や、通関士としての財務大臣の確認に、TOEICスコアを求める公的な一律基準はありません。ただし、採用企業が応募条件や歓迎条件として語学スコアを設けることはあります。
英会話と読解はどちらを先に勉強すべきですか?
通関書類の作成・審査を想定するなら、インボイスや運送書類を読む力から始めるのが現実的です。海外との直接連絡を担当する場合は、その後に英文メールや会話を加えます。
まとめ|英会話より先に英文書類を正確に読む
通関士試験に英語という独立科目はありませんが、実務では英文のインボイス、パッキングリスト、運送書類などを確認します。最初の目標は、流ちょうな会話ではなく、申告に必要な項目を正確に読み取り、数字や書類の整合を確認できることです。
これから受験する人は試験3科目を優先し、通関実務の問題に出る用語から覚えましょう。就職・転職を考えている人は、応募先が書類読解、英文メール、会話のどこまで求めるのかを確認してください。求人の選び方は通関士に強い転職サイト・エージェント、貿易事務も含めて探す場合は貿易事務の転職エージェントで整理しています。
出典・確認先
公式情報の確認日:2026年10月15日
