通関業法の営業・届出では、似た手続きが12条と22条に分かれています。営業所の廃止と、通関業そのものの廃止も同じではありません。
結論は、「日常の営業」「許可申請事項の変更」「従業者等の異動」「通関業の廃止」を分けることです。料金は見やすく掲示し、帳簿・書類は定められた起算点から3年間保存します。変更や異動は、その内容に合う条文で届け出ます。
この記事では、通関業法12条・18条・22条と施行令4条・8条から10条を中心に、主体・時期・対象を整理します。第60回通関士試験の出題範囲は、2026年7月1日現在で施行されている法令・告示・通達です。通関業法は50分、選択式41点(13問)・択一式4点(4問)の合計45点・17問で実施されます。
営業・届出の全体像
| 論点 | 主な根拠 | 覚える軸 |
|---|---|---|
| 料金の掲示 | 18条 | 営業所で依頼者に見やすく掲示 |
| 記帳・書類保存 | 22条1項・施行令8条 | 対象と3年の起算点を分ける |
| 許可申請事項等の変更 | 12条 | 変更、欠格事由、許可消滅の3区分 |
| 従業者等の異動 | 22条2項・施行令9条 | 異動の都度届け出る |
| 定期報告 | 22条3項・施行令10条 | 年1回、翌年6月30日まで |
試験では「財務大臣への届出」という共通点だけでまとめず、何が変わったのかから根拠条文を選びます。
18条|料金は依頼者に見やすく掲示する
通関業者は、通関業務と関連業務の料金の額を、営業所において依頼者の見やすいように掲示しなければなりません。条文は「公衆の見やすい場所」ではなく、「依頼者の見やすいように」と定めています。
基本通達は、掲示の様式と場所を社会通念上妥当な範囲で通関業者が定められるとしています。料金をインターネットで閲覧できるようにし、営業所では料金そのものを表示しない場合は、料金掲載ページのアドレスまたは二次元コードを、依頼者に見やすく掲示します。「紙の料金表しか認められない」と固定して覚えないようにしましょう。
22条1項|帳簿と3種類の書類を保存する
通関業者は、営業所ごとに、取り扱った通関業務と関連業務の帳簿を設けます。施行令8条は、種類別の件数と料金に加え、1件ごとの依頼者、貨物の品名・数量、提出年月日、受理番号、料金などを記載事項としています。
| 保存対象 | 内容 | 3年の起算 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 通関業務・関連業務の件数、料金、1件ごとの明細など | 帳簿を閉鎖した日後 |
| 提出書類の写し | 申告書、申請書、不服申立書など | 書類を作成した日後 |
| 依頼を証する書類 | 依頼者から依頼を受けたことが分かる書類 | 書類を作成した日後 |
| 料金受領書類の写し | 料金を受領したことが分かる書類 | 書類を作成した日後 |
保存期間は同じ3年でも起算点が違う
施行令8条3項は、帳簿を閉鎖の日後3年間、書類を作成の日後3年間保存すると定めています。「すべて閉鎖後3年」ではありません。期間だけでなく、何の日から数えるかまで一組にします。
1件ごとの明細は、保存する提出書類の写しに必要事項を追記して記録する方法も認められています。帳簿を必ず一つの独立様式で作らなければならない、という意味ではありません。
12条|変更等の届出は3区分で判断する
12条は、通関業者が次のいずれかに該当したとき、遅滞なく財務大臣へ届け出る規定です。実務上の変更届には、税関様式B第1140号が使われます。
1号|許可申請書の主要事項が変わった
- 氏名・名称・住所、法人の役員の氏名・住所
- 営業所の名称・所在地
- 営業所の責任者、置こうとする通関士の数
- 通関業以外に営む事業の種類
これらは4条1項1号から3号までと5号の事項です。4号の「取扱貨物が一定種類だけに限定される場合の貨物の種類」は、12条1号の列挙に含まれていません。
2号|指定された欠格事由に該当した
心身の故障に関する事由、一定の刑・税法違反・暴力団関係、法人役員の欠格など、6条のうち12条2号が指定する事由に該当した場合です。6条の全号ではなく、1号、3号から7号まで、10号、11号が対象です。
3号|10条により通関業の許可が消滅した
通関業の廃止、一定の場合の死亡、法人の解散、破産手続開始の決定により、通関業の許可が消滅した場合です。届出義務者は、廃止なら元の個人または元法人の代表役員、死亡なら相続人など、施行令4条が場合ごとに定めています。
営業所の新設・廃止と通関業の廃止を混同しない
| 出来事 | 手続きの整理 |
|---|---|
| 通関業務を行う営業所を新設 | 8条による財務大臣の許可が必要 |
| 個別の営業所を廃止 | 営業所に関する許可申請事項の変更として12条1号の届出 |
| 通関業そのものを廃止 | 10条で許可が消滅し、12条3号の届出 |
個別営業所の廃止だけで、通関業者の許可全体が10条により消滅するわけではありません。「営業所を廃止」と「通関業を廃止」の主語と範囲を読み分けます。営業所新設の許可条件は、前の記事で詳しく整理しています。
22条2項|従業者等の異動はその都度届け出る
通関業者は、通関士その他の通関業務の従業者の氏名と異動を財務大臣へ届け出ます。法人の場合は、通関業務を担当する役員も対象です。施行令9条は、次の区分で届出を行うと定めています。
- 通関業務を担当する役員
- 通関業務を行う営業所の責任者
- 通関士
- その他の通関業務の従業者
新規従業・退職・配置換えなどが対象
届出は、新たに置かれた場合、置かれなくなった場合、区分間の異動があった場合に、その都度行います。税関様式B第1180号の記載要領は、新規従業、営業所間の配置換え、退職、他部門への配置換えなどを例示しています。
営業所責任者の変更や通関士数の変更は、4条1項3号の許可申請事項にも関わります。このため同じ事実が12条1号と22条2項の両方に関係することがあります。B第1180号も、その併記を前提とした様式です。
22条3項|定期報告書は翌年6月30日まで
通関業者は、取扱件数、料金、支出、通関業務に使う資産などを記載した定期報告書を年1回提出します。施行令10条の報告期間は、毎年4月1日から翌年3月31日までに終了する事業年度です。個人の通関業者は歴年で扱います。
提出期限は翌年6月30日です。法人は、報告期間に係る事業年度の貸借対照表と損益計算書を添付します。「異動の都度行う22条2項の届出」と「年1回の22条3項の報告」を区別しましょう。
過去問は対象・時期・重なりで復習する
営業・届出の肢は、数字だけでなく対象や提出時期を入れ替えてきます。間違えた肢は次の3列で直すと、似た制度を分けやすくなります。
- 対象:料金、帳簿、許可申請事項、従業者、年次報告のどれか
- 時期:遅滞なく、その都度、年1回、3年間のどれか
- 重なり:12条だけか、22条だけか、両方に関係するか
第59回までの公式問題を解くときも、正誤だけで終えず、現行の条文・施行令・基本通達へ戻って根拠を確認します。
よくある質問
帳簿と書類は、どちらも閉鎖後3年ですか?
いいえ。帳簿は閉鎖の日後3年間、書類は作成の日後3年間です。期間は同じでも起算点が違います。
営業所を1か所廃止すると、通関業の許可は消滅しますか?
個別営業所の廃止は、営業所に関する申請事項の変更として扱います。通関業そのものを廃止した場合は、10条による許可消滅と12条3号の届出です。
料金表は紙で掲示しなければなりませんか?
いいえ。基本通達は、社会通念上妥当な範囲で掲示方法を定められるとしています。インターネットで料金を閲覧できるようにし、営業所で料金を表示しない場合は、料金掲載ページのアドレスまたは二次元コードを依頼者に見やすく掲示します。
まとめ|条文の役割を分けて覚える
- 18条:通関業務・関連業務の料金を依頼者に見やすく掲示する
- 22条1項:帳簿は閉鎖の日後、書類は作成の日後から3年間保存する
- 12条:許可申請事項の変更、指定された欠格事由、許可消滅を遅滞なく届け出る
- 個別営業所の廃止と、通関業そのものの廃止を区別する
- 22条2項:従業者等の異動をその都度届け出る
- 22条3項:定期報告書を年1回、翌年6月30日までに提出する
最終確認には、e-Govの通関業法、通関業法施行令、税関の通関業法基本通達、変更届(B第1140号)、従業者等の異動届(B第1180号)、第60回通関士試験受験案内を使いましょう。次の論点は、監督処分・懲戒処分で整理しています。
※法令・試験情報は2026年7月29日に確認しました。受験時は最新の受験案内と法令をご確認ください。


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