通関士試験で「通関業者」と「通関士」の義務が混ざると、設置・審査・確認・名義貸しの正誤判断を誤りやすくなります。
結論は、営業所に通関士を置くのも、対象書類を通関士に審査・記名させるのも、主体は通関業者です。一方、確認を受けて通関士として働く資格や、名義貸しをしない義務は、通関士個人に関わります。
この記事では、通関業法13条・14条・19条・20条・31条から33条を中心に、誰が・何を・いつ行うかを整理します。第60回通関士試験の出題範囲は、2026年7月1日現在で施行されている法令・告示・通達です。通関業法は50分、選択式41点(13問)・択一式4点(4問)の合計45点・17問で実施されます。
設置・審査・確認・名義貸しの全体像
| 論点 | 条文 | 主体 | 判断の軸 |
|---|---|---|---|
| 通関士の設置 | 13条 | 通関業者 | 通関業務を行う営業所ごとが原則 |
| 書類の審査・記名 | 14条・施行令6条 | 通関業者 | 政令で定める通関書類が対象 |
| 秘密保持・信用 | 19条・20条 | 条文ごとに異なる | 退職後の扱いと対象者を分ける |
| 通関士の確認 | 31条 | 通関業者が届出 | 試験合格だけでは通関士として従事できない |
| 資格の喪失 | 32条 | 通関士個人に関係 | 退職等と試験合格資格を混同しない |
| 通関士の名義貸し | 33条 | 通関士 | 他人に自己の名義を使わせない |
試験では、条文番号だけでなく、義務を負う主体・対象・例外を一組で確認しましょう。
通関業法13条|営業所ごとに通関士を置く
通関業者は、通関業務を適正に行うため、通関業務を行う営業所ごとに通関士を置くのが原則です。設置義務を負うのは通関士本人ではなく、通関業者です。
法律は全国一律の固定人数を示していません。基本通達では、営業所に置く通関士の人数を、業務の効率化、業務の難易度、通関士の経験などを総合して通関業者が判断するとしています。したがって、「営業所ごとに必ず1人だけ」「業務量に応じて法定人数が決まる」という覚え方は避けましょう。
例外は許可で貨物が一定種類に限定された営業所
営業所で取り扱う通関業務の貨物が、許可の条件によって一定の種類の貨物だけに限られている場合は、通関士を置く義務の例外です。
基本通達は、貨物の種類が限られるだけでなく、限定された手続きを反復継続して行い、業務全体が簡易かつ定型化されている場合と説明しています。単に取扱件数が少ない、繁忙期ではない、営業所が小さいという理由ではありません。
通関業法14条|対象書類を審査し記名させる
通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署へ提出する通関書類のうち、施行令6条で定めるものについて、通関士に内容を審査させ、記名させなければなりません。
施行令6条の対象は4つに整理する
| 区分 | 主な書類 |
|---|---|
| 通関業法2条1号イ(1)の申告・申請 | 輸出申告、輸入申告、特定・特例に関する申請、船用品・機用品の積込み申告、保税地域に置くことの承認申請など |
| 不服申立て | 関税法等または行政不服審査法に基づく不服申立書 |
| 特例申告 | 関税法7条の2第1項の特例申告書 |
| 納税申告の修正等 | 修正申告書、更正請求書 |
「税関に出す書類はすべて対象」でも、「輸出入申告書だけが対象」でもありません。まず通関業務に当たるかを確認し、そのうえで施行令6条の列挙に入るかを判断します。
設置義務のない営業所に通関士を置いた場合
14条の対象は、通関士が通関業務に従事している営業所の通関業務に係る書類です。基本通達14-1は、13条の例外で設置義務がない営業所でも、実際に通関士を置いた場合は、対象書類の審査・記名義務を負うとしています。
19条と20条|秘密保持と信用失墜を区別する
| 条文 | 対象者 | 内容 | 退職後 |
|---|---|---|---|
| 19条 | 通関業者の役員、通関士、その他の通関業務の従業者 | 正当な理由なく、業務で知った秘密を漏らし、または盗用しない | 義務が続く |
| 20条 | 通関業者の役員、通関士 | 通関業者または通関士の信用・品位を害する行為をしない | 条文に退職後の明文なし |
20条の信用失墜行為禁止に「その他の従業者」は含まれません。一方、19条の秘密保持義務にはその他の通関業務の従業者も含まれ、これらの立場でなくなった後も義務が続きます。
通関業法31条|試験合格後に財務大臣の確認を受ける
通関士試験に合格しただけでは、勤務先で「通関士」の名称を用いて通関業務に従事できません。通関業者が、合格者の氏名、従事させる営業所などを財務大臣へ届け出て、欠格事由に該当しないことの確認を受けます。
- 通関士試験に合格する
- 勤務先の通関業者が通関士確認届を提出する
- 欠格事由に該当しないことの確認を受ける
- 通関士として通関業務に従事する
法律上の権限者は財務大臣ですが、施行令14条により確認の権限は税関長へ委任されています。届出の主体を合格者本人と取り違えないこと、試験合格と確認を分けることがポイントです。
32条|退職しても試験合格まで消えるとは限らない
通関士が通関業者の通関業務に従事しなくなったときなどは、32条により通関士でなくなります。ただし、基本通達は、一定の場合を除き通関士試験に合格した資格まで失うわけではないと整理しています。欠格事由に該当しなければ、改めて確認を受けて通関士となることができます。
通関業法33条|通関士の名義貸しは禁止
通関士は、自己の名義を他人に通関業務のために使用させてはなりません。基本通達は、次のような場合を名義貸しとして示しています。
- 通関士が自分で通関書類を審査せず、他人に自分の記名をさせる
- 退職などで通関士でなくなったものの異動届がない者が、通関書類に通関士として自分の記名をさせる
ここで重要なのは、「異動届が出るまで通関士資格が残る」と考えないことです。退職などで32条に該当すれば通関士でなくなりますが、異動届がない者も33条の禁止対象に含めることで、名義の不正利用を防いでいます。
過去問は主体・対象・例外の3列で復習する
通関業法は50分で17問を解くため、条文を長文のまま覚えるより、誤った肢を切る軸を作る方が実戦的です。
- 主体:通関業者、財務大臣、税関長、通関士のどれか
- 対象:すべての書類か、政令で定める書類か
- 例外:一定種類の貨物、設置義務のない営業所、退職後などの条件があるか
間違えた肢は「13条:通関業者/営業所ごと/貨物限定の例外」のように1行へ圧縮し、現行条文と基本通達で根拠を確認します。第59回の公式問題と正答も、現行法令との照合に使えます。
よくある質問
すべての営業所に通関士が必要ですか?
原則は、通関業務を行う営業所ごとに必要です。ただし、許可の条件によって通関業務に係る貨物が一定種類だけに限定され、業務が簡易・定型化されている営業所には例外があります。
通関士試験に合格すれば、すぐ通関士として働けますか?
いいえ。勤務先の通関業者が届出を行い、財務大臣の確認を受ける必要があります。実務上、その権限は税関長へ委任されています。
税関へ提出する書類はすべて通関士が審査しますか?
いいえ。14条の対象は、他人の依頼に応じて提出する通関書類のうち、施行令6条で定める書類です。書類名だけでなく、どの手続きに基づくものかを確認します。
まとめ|誰が何をするかで整理する
- 13条:通関業者が営業所ごとに通関士を置く。貨物限定の営業所には例外がある
- 14条:通関業者が施行令6条の対象書類を通関士に審査・記名させる
- 19条と20条:対象者と退職後の扱いが異なる
- 31条:試験合格後、通関業者の届出により財務大臣の確認を受ける
- 32条:通関士でなくなることと、試験合格資格の喪失は同じではない
- 33条:自分で審査せず他人に記名させるなどの名義貸しは禁止
最終確認には、e-Govの通関業法、通関業法施行令、税関の通関業法基本通達、第60回通関士試験受験案内を使いましょう。許可・営業所の詳細は、前回の通関業の許可・営業所・許可条件で整理しています。
※法令・試験情報は2026年7月29日に確認しました。受験時は最新の受験案内と法令をご確認ください。


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