少額輸入貨物の免税見直しはいつから?2028年改正と通関士への影響

越境ECの小口貨物と2028年の制度改正を示す通関イメージ キャリアと実務

少額輸入貨物の免税制度は、2026年7月時点ですべて終了したわけではありません。現在は、課税価格の合計額が1万円以下なら、例外品を除き関税・消費税・地方消費税が免除されます。個人使用貨物の課税価格を海外小売価格の60%とする特例も、まだ適用中です。

一方、2028年4月1日からは、越境ECのうち一定の少額商品の販売時に消費税を課す仕組みと、個人使用貨物の「0.6掛け」を廃止する改正が始まります。つまり、正確には「少額貨物の関税免税が一律に終わる」のではなく、越境ECの消費税を販売時に捕捉し、課税価格の特例も見直す改正です。

この記事では、2026年7月26日に確認した財務省・税関の資料を基に、現在のルール、2028年に変わる点、買い手・事業者・通関士への影響を分けて解説します。

先に要点

  • 2026年7月現在:課税価格1万円以下の免税と、個人使用貨物の0.6掛けは現行制度
  • 2028年4月1日:一定の越境EC商品を販売時の消費税課税へ変更
  • 同日:個人使用貨物の課税価格を海外小売価格の60%とする特例を廃止
  • 通関士の人数・年収・需要が必ず増えると決まったわけではない

少額輸入貨物の免税見直しはいつから?

実施時期を理解するには、「現在の制度」と「成立済みだが施行前の改正」を分ける必要があります。

時点制度の状態実務上の見方
2026年7月現在課税価格1万円以下の免税と個人使用貨物の0.6掛けが適用中現在の買い物・輸入は現行ルールで判定
2028年4月1日から一定の越境EC商品の販売時課税、プラットフォーム課税、0.6掛け廃止を実施販売情報と輸入申告情報の連携が重要になる

令和8年度税制改正はすでに法律として成立しています。財務省は、越境ECに関する消費税制度と個人使用貨物の課税価格特例の改正日を、いずれも2028年4月1日としています。

したがって、「検討されているだけ」とするのも、「すでに免税が終わった」とするのも正確ではありません。2026年7月時点では、改正内容と開始日は決まっているが、主要部分は施行前です。

2026年7月現在の少額輸入貨物のルール

課税価格の合計額が1万円以下なら原則免税

税関の案内では、課税価格の合計額が1万円以下の貨物は、原則として関税・消費税・地方消費税が免除されます。ただし、酒税やたばこ税などは免除されません。また、革製バッグ、手袋、履物、ニット製衣類など、1万円以下でも免税にならない品目があります。

免税判定は、単純に商品ページの表示価格だけを見るものではありません。一般貨物は1申告の課税価格の合計、郵便物は1包装の課税価格の合計で判断されます。同じインボイスの貨物を分割申告した場合や、同じ差出人から同じ受取人へ同時期に分割発送した場合は、合算して判定されることがあります。

個人使用貨物は海外小売価格の60%で課税価格を計算

個人が自分で使用する目的で輸入する貨物は、現在、海外小売価格に0.6を掛けた金額が課税価格になります。このため、海外小売価格が約16,666円でも、ほかの条件を満たせば課税価格が約1万円となる計算例が知られています。

ただし、商売用の貨物を個人使用として申告することはできません。送料、分割発送、品目ごとの免税除外などで結果が変わるため、実際の輸入では税関の最新案内を確認してください。現行制度の判定を詳しく知りたい方は、個人輸入の関税・免税ルールも参考にしてください。

出典:税関「少額輸入貨物の簡易税率」税関「課税価格の合計額が1万円以下の物品の免税適用について」

2028年4月に変わる3つのポイント

1.一定の越境EC商品は販売時に消費税を課税

2028年4月1日から、国外から国内へ発送される通信販売のうち、1つの商品の対価が税抜1万円以下の取引は「特定少額資産の譲渡」として、販売時の消費税課税の対象になります。

これは、現在の「1申告または1包装に係る課税価格の合計額が1万円以下」という輸入時の免税判定と同じ概念ではありません。改正後は、販売時に課税された対象商品を輸入時に識別し、消費税を二重に課さない仕組みが必要です。

財務省の改正解説によると、登録を受けた販売事業者は、仕入書などに登録番号と対象取引である旨を記載し、輸入者または通関業者へ通知します。輸入申告書などへ必要事項を付記した貨物は、輸入時の消費税が免除されます。郵便物にも税関告知書を使う対応が設けられます。

2.大規模なプラットフォームへ納税義務を転換

対象取引の対価を決済まで含めて管理し、一定の取引規模を超える指定プラットフォームでは、販売事業者に代えてプラットフォーム事業者が消費税を申告・納付する制度も導入されます。財務省の解説では、対象となる物品販売などの合計額が50億円を超えることが指定基準に含まれます。

ただし、すべての海外通販が同じプラットフォーム方式になるわけではありません。決済に関与しないプラットフォームは対象外となる場合があり、販売事業者自身が登録・申告する経路もあります。

3.個人使用貨物の0.6掛けを廃止

同じ2028年4月1日から、個人使用貨物の課税価格を海外小売価格の60%とする特例が廃止されます。改正後は「小売価格に0.6を掛ければよい」という現在の計算は使えません。

一方で、財務省の改正内容は、少額貨物に対する関税の免税を一律に廃止するものとは示していません。越境ECの販売時に消費税を課す改正と、関税・消費税を含む輸入時の少額免税は分けて理解する必要があります。施行時の具体的な価格計算や申告方法は、2028年までに税関・国税庁が示す最新案内で再確認してください。

出典:財務省「令和8年度税制改正の解説(消費税法等の改正)」財務省「関税定率法等の一部を改正する法律案について」

買い手と事業者への影響

立場確認したい変化断定できないこと
海外通販の購入者2028年以降は販売時に消費税が反映される対象が増える。購入画面の税額・輸入時費用を確認すべての商品価格が一律10%上がるとは限らない
海外販売事業者対象取引の判定、登録番号、仕入書への記載、輸入者側への情報通知すべての事業者が同じ申告経路になるわけではない
プラットフォーム事業者指定要件、納税義務、販売者・物流事業者との情報連携決済に関与しないサービスまで一律対象ではない
通関業者・物流事業者販売時課税済みか、登録番号、貨物情報、申告情報の一致制度改正だけで取扱件数や利益が増えるとはいえない

購入者にとって重要なのは、「免税がなくなるから必ず10%値上がりする」と早合点しないことです。販売価格へ税を含めるか、別表示にするか、価格をどう設定するかは販売者やプラットフォームによって異なります。送料や関税、通関手数料も別の論点です。

事業者側では、販売画面、決済、仕入書、運送データ、輸入申告の情報がつながらないと、販売時に納めた消費税と輸入時の免税を正しく対応させにくくなります。制度開始までの準備では、税率だけでなく、データ項目と責任分担の設計が重要です。

通関士の仕事はどう変わる?

改正から直接いえるのは、少額貨物でも正確な販売情報を受け取り、対象取引を識別し、申告へつなぐ実務が重要になることです。「通関士がデータアナリストになる」「戦略コンサルタントへ進化する」「需要や年収が必ず上がる」とまでは、公式資料から断定できません。

すでに厳しくなっている申告情報の正確性

税関は2026年4月から、仕出人名、輸入者名、品名、数量、価格などの誤りが継続する通関業者に対し、マニフェスト申告・予備審査制の利用を認めない対応を始めました。AEO通関業者はこの対象から除かれています。

大量の小口貨物を速く処理するだけでなく、前段階で正しい情報をそろえ、誤りを継続させない管理が必要になっています。これは将来予測ではなく、すでに始まっている実務上の変化です。

2028年に向けて重要になる実務

  • 取引区分の確認:越境ECの対象商品か、販売時課税済みかを確認する
  • 書類・データの照合:登録番号、仕入書、運送データ、申告内容の不一致を見つける
  • 課税価格の判断:0.6掛け廃止後のルールを理解し、根拠資料をそろえる
  • 例外処理:分割発送、郵便物、免税除外品目、情報不足の貨物を定型処理から切り分ける
  • 関係者への説明:販売者、プラットフォーム、運送会社、輸入者へ不足情報と修正点を具体的に伝える

税関の中長期構想2030も、2025年の輸入許可件数が約2億3,000万件となり、2019年の約5倍に増えたとしています。だからこそ、全件を人手で処理するというより、システムで大量処理しつつ、情報不足・不整合・例外を人が適切に判断する方向が現実的です。

通関士の具体的な1日の流れは通関士の1日の仕事、自動化と人の判断の境界は通関士の仕事はAIでなくなるのかで詳しく解説しています。

出典:税関「マニフェスト申告・予備審査制の見直しについて」税関「税関中長期構想2030」

通関士を目指す人が今から備えること

制度改正のために、いきなり統計学や高度なコンサルティングを学ぶ必要はありません。まずは通関士試験と実務の土台を固め、その上でデータを正確に扱う習慣を身につける方が順序として自然です。

  1. 関税法・関税定率法・通関業法の基礎を固める
    免税、課税価格、輸入申告、通関業者と通関士の責任を区別して理解します。
  2. 数字と根拠資料を対応させる
    価格、数量、品名、原産地などを、仕入書・運送書類・商品情報と照合する練習が役立ちます。
  3. 制度の施行日を管理する
    成立日と施行日を混同せず、現在の申告に使うルールと将来の準備を分けます。
  4. 例外を言葉で説明する
    「原則免税」だけでなく、免税除外品目、分割発送、個人使用と商業貨物の違いを説明できる状態を目指します。

資格取得後の勤務先やキャリアを比較したい方は、通関士のキャリアパスも確認してください。制度改正だけで就職先を決めず、扱う貨物、教育体制、残業・休日対応、通関士確認の予定まで求人票と面接で確かめることが大切です。

よくある質問

少額輸入貨物の免税はもう廃止されましたか?

いいえ。2026年7月時点では、課税価格1万円以下の免税と個人使用貨物の0.6掛けは適用中です。主要な改正は2028年4月1日に始まります。

2028年から1万円以下の商品には必ず関税がかかりますか?

そのような一律改正ではありません。今回の中心は、一定の越境EC商品の販売を消費税の課税対象にすることと、個人使用貨物の課税価格を60%とする特例の廃止です。関税の有無は品目、課税価格、免税規定などで別に判断します。

海外通販は一律10%値上がりしますか?

一律には断定できません。対象取引では消費税の負担関係が変わりますが、販売価格への反映方法、値付け、送料、手数料は事業者ごとに異なります。購入画面の税額と輸入時費用を確認してください。

改正で通関士の求人は増えますか?

改正だけを根拠に、求人や年収が増えるとはいえません。公式資料から確認できるのは、貨物情報の正確性、販売情報と申告情報の連携、例外処理、法令遵守が重要になることです。採用動向は各社の取扱量、業務体制、自動化、配置計画にも左右されます。

まとめ

少額輸入貨物の制度は「免税が全面終了する」という単純な話ではありません。2026年7月現在は現行制度が続き、2028年4月1日から、一定の越境EC商品の販売時課税、プラットフォーム課税、個人使用貨物の0.6掛け廃止が始まります。

通関士への影響も、仕事が自動的に高付加価値化するという予言ではなく、販売・物流・申告の情報を正確につなぎ、誤りと例外を判断する必要が高まることとして捉えるのが安全です。今は施行日と対象を正しく理解し、基本法令、課税価格、書類照合、説明力を順に身につけてください。

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