関税の減税・免税・戻し税の違い|要件・期限・手続きを整理

関税の減税・免税・戻し税を3つの分岐で示したアイキャッチ 関税法等

関税の減税・免税・戻し税は、すべて税負担を軽くする制度ですが、判断する時点と手続が違います。税額を軽くして輸入するのが減税、要件を満たして関税を課さないのが免税、納付後に払い戻すのが戻し税です。

この記事では、2026年7月1日現在の関税定率法と税関資料に基づき、通関士試験で問われやすい第10条・第11条・第14条・第15条・第17条・第19条の3・第20条を、対象貨物、期間、申請時点、必要書類の順に整理します。2028年4月1日に予定される越境EC課税の見直しは、現行制度と分けて説明します。

減税・免税・戻し税の違いを先に比較

区分税負担が決まる場面基本的な考え方代表例
減税輸入許可前本来の税額から一定額を軽減する変質・損傷、加工・修繕後の再輸入
免税輸入時法律上の用途・再輸出等の要件を満たせば関税を免除する無条件免税、特定用途免税、再輸出免税
戻し税輸入許可・納付後再輸出・廃棄等の要件を満たして納付済みの関税を払い戻す同一状態再輸出、違約品等の再輸出・廃棄

制度名だけで暗記すると混同しやすいため、問題文では①いつ、②どこにある貨物か、③変質・使用・加工があるか、④輸出または廃棄するか、⑤事前手続をしたか、の順で確認します。

減税:価値の減少や再輸入部分を調整する

変質・損傷等の減税または戻し税(第10条)

輸入申告後、輸入許可前に貨物が変質・損傷して経済的価値が下がったときは、その低下に応じて関税を軽減します。申告納税方式の貨物が申告後に損傷した場合は、原則として更正の請求で税額を直します。賦課課税方式では、輸入申告書に変質・損傷減税申請書を添付する取扱いです。

輸入許可後も引き続き保税地域等にある貨物が、災害その他やむを得ない理由で滅失・変質・損傷した場合は、関税の全部または一部の払戻しを受けられます。許可前は減税、許可後に保税地域等で災害等が起きた場合は戻し税という時点差が重要です。

加工・修繕のため輸出した貨物の減税(第11条)

日本から加工または修繕のため輸出し、輸出許可の日から原則1年以内に再輸入する貨物は、輸出時の性質・形状で輸入されたとした場合の関税相当額を軽減できます。加工の場合は、その加工を日本で行うことが困難と認められるものに限られますが、修繕にはこの要件をそのまま当てはめません。

再輸入時だけ申し出ればよいわけではありません。輸出時に加工・修繕輸出貨物確認申告書(T-1050)で確認を受け、再輸入時に加工・修繕・組立製品減免税明細書(T-1060)等を提出します。

免税:無条件免税と条件付き免税を分ける

無条件免税(第14条)

無条件免税には、皇室用物品、外国元首等の物品、身体障害者用に特に製作された器具、再輸入貨物、課税価格の合計額が1万円以下の物品など、条文が定める複数の類型があります。「無条件」は要件確認が不要という意味ではなく、対象類型に該当することを確認する必要があります。

特定用途免税(第15条)

学校等で使用する学術研究用品、博物館等に陳列する標本、慈善・救じゅつ用の寄贈物品など、指定された貨物を指定用途に使うことを条件に免税します。輸入申告時に減免税明細書を提出し、必要な場合は寄贈の事実や用途を証明する書類も添付します。

輸入許可の日から2年以内に用途外使用や用途外の譲渡をすると、税関長の承認がある場合などを除き、免除された関税が徴収されます。無条件免税と違い、許可後の用途制限がある条件付き免税として整理します。

再輸出免税:輸入時から再輸出を前提にする

再輸出免税(第17条)の対象・期間・担保

加工される貨物、修繕される貨物、学術研究用品、試験品、見本、国際競技会・国際会議の使用物品、展覧会への出品物品など、政令で定める貨物を原則1年以内に再輸出する場合に免税します。税関長は必要に応じ、免除される関税額に相当する担保を求めることができます。

輸入時に再輸出貨物減免税明細書(T-1340)を提出し、再輸出後は輸出済みの記載がある輸入許可書等を交付された日から1か月以内に輸入地の税関へ届出をします。期間内に再輸出しない、または免税用途以外に使うと、原則として免除税額が徴収されます。

制度輸入時の関税基本期間輸入時の確認
再輸出免税(第17条)免除原則1年以内に再輸出T-1340等で免税手続
同一状態再輸出戻し税(第19条の3)いったん納付原則1年以内に再輸出T-1625で同一性を確認

戻し税:納付後の再輸出・廃棄で払い戻す

輸入時と同一状態で再輸出する場合(第19条の3)

関税等を納付して輸入した貨物を国内で使用せず、輸入時の性質・形状が変わらない状態で、輸入許可の日から原則1年以内に再輸出する場合の払戻しです。輸入時に再輸出貨物確認申請書(T-1625)を提出し、再輸出時に関税払戻し(減額)申請書(T-1627)等を提出します。詳しい流れは税関の同一状態で再輸出する場合の戻し税手続で確認できます。

違約品等を再輸出・廃棄する場合(第20条)

品質・数量等が契約と違う貨物、個人使用の通信販売品で品質等が予期しなかったため返送等がやむを得ない貨物などを、輸入時の性質・形状を変えずに再輸出または廃棄する場合の払戻しです。原則として輸入許可の日から6か月以内に保税地域へ搬入し、税関へ届け出る必要があります。

単に海外の販売者へ返送すれば自動的に戻るわけではありません。再輸出なら違約品等保税地域搬入届(T-1610)と関税払戻し申請書(T-1620)等、廃棄なら廃棄承認申請書(C-3170)等により、税関の確認を受けます。税関の違約品等の戻し税手続も先に確認してください。

制度貨物の状態期限の基準試験での見分け方
第10条の許可後戻し税保税地域等で災害等により滅失・変質・損傷許可後も引き続き保税地域等にある間災害その他やむを得ない理由
第19条の3国内未使用で輸入時と同一状態原則1年以内に再輸出輸入時の確認手続も必要
第20条契約相違・予期しない品質等の違約品原則6か月以内に保税地域へ搬入再輸出または税関承認を受けた廃棄

少額輸入貨物の免税:1万円・0.6掛け・除外品

2026年7月1日現在の1万円基準

課税価格の合計額が1万円以下の物品は、原則として関税・消費税・地方消費税が免除されます。1申告の合計で判断し、1インボイスを分割申告しても全貨物を合計します。郵便物も、重量制限等による分割や同一差出人から同一名宛人へ同時期に分散したものは合計して判定します。

個人が自分で使用する目的で輸入する貨物の課税価格は、現行の税関取扱いでは原則として海外小売価格×0.6です。ただし、「海外小売価格16,666円以下なら必ず免税」とは限りません。合算、送料等を含む取引区分、酒税・たばこ税等、免税除外品を別に確認します。

1万円以下でも免税されない主な品目

税関が主な免税除外品として示すのは、革製のカバン・ハンドバッグ・手袋等、編物製衣類(Tシャツ、セーター等)、スキー靴、革靴、本底が革製の履物類等です。個人的使用に供される贈与品として認められる場合は例外があります。

米、ミルク、食肉調製品、たばこ、精製塩などは、20万円以下の少額輸入貨物に使う簡易税率の対象外品として挙げられる品目であり、1万円以下の免税除外品一覧と同じではありません。ここを混ぜないことが試験対策でも実務でも重要です。

2028年の越境EC課税は現行制度と分ける

令和10年4月1日から予定される変更

2026年度税制改正では、国境を越えた通信販売のうち1万円以下の少額輸入貨物の販売を消費税の課税対象とし、一定の取引では国外事業者やプラットフォーム事業者に納税義務を負わせる仕組みが、2028年4月1日から予定されています。対象となる販売では、輸入時ではなく販売時に消費税を課す方向です。

これは「現時点で1万円以下の関税免税が一律廃止された」という意味ではありません。また、0.6掛けの見直しも対象となる越境EC販売との関係で扱う必要があり、すべての個人使用貨物に直ちに同じ結論を広げないでください。第60回通関士試験は2026年7月1日現在施行の法令が基準なので、2028年制度は現行法の正誤判定へ混入させません。

通関士試験では5段階で判定する

順番確認すること典型的なひっかけ
1輸入許可前か、許可・納付後か減税と戻し税の入替え
2貨物の状態と置かれた場所国内使用済みを同一状態とする
3用途・再輸出・災害・違約のどれか別制度の要件を混ぜる
41年、6か月、2年などの起算点再輸出日と保税地域搬入日の混同
5輸入・輸出時の申請と確認書類事後申請だけで足りるとする

第60回通関士試験の「関税法、関税定率法その他関税に関する法律」は、11時から12時40分までの100分です。制度を丸暗記せず、問題文の時点・状態・目的・期限・手続に線を引いて判定すると、似た制度を切り分けやすくなります。

まとめ:制度名より時点・状態・手続で整理する

  • 減税:輸入許可前の価値減少や、加工・修繕後の再輸入に応じて税額を軽減する。
  • 免税:対象、用途、再輸出等の要件を満たして輸入時の関税を免除する。
  • 戻し税:納付後、同一状態の再輸出や違約品の再輸出・廃棄等で払い戻す。
  • 少額免税の除外品と20万円以下の簡易税率の対象外品を混同しない。
  • 2028年の越境EC課税は、2026年7月1日現在の現行制度と分けて扱う。

前の論点である修正申告・更正の請求とつなげると、第10条の輸入申告後・許可前の変質損傷を理解しやすくなります。次は、税関の処分に不服がある場合の不服申立てを確認しましょう。

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