通関業法の罰則は、41条から44条までを法定刑の重さごとに並べ、45条の両罰規定がどの違反に適用されるかを分けると整理できます。雑則は、審査委員、名称の使用制限、不服申立て、権限委任の4項目です。
この記事では、2026年7月1日現在で施行されている通関業法・施行令・基本通達に基づき、39条から45条までを試験で比較しやすい順に解説します。旧記事で抜けていた42条・43条と、両罰規定の対象外も含めて確認します。
第60回通関士試験での位置づけ
第60回通関士試験受験案内では、通関業法は50分、選択式41点(13問)・択一式4点(4問)の合計45点・17問です。出題範囲は、2026年7月1日現在で施行されている法律、政令、省令、告示、通達です。
罰則は、違反行為と法定刑を入れ替えた選択肢に注意が必要です。条文番号だけでなく、誰の行為か、何に違反したか、拘禁刑を含むか、両罰規定の対象かを一組で確認しましょう。
39条〜45条の全体像
| 条文 | 主題 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 39条 | 審査委員 | 委嘱の場面、人数、資格 |
| 40条 | 名称の使用制限 | 通関業者・通関士でない者の名称使用 |
| 40条の2 | 不服申立て | 関税法91条の準用 |
| 40条の3 | 権限の委任 | 財務大臣から税関長への委任 |
| 41〜44条 | 罰則 | 違反行為と法定刑 |
| 45条 | 両罰規定 | 適用される違反と除外 |
通関業法では、第五章が雑則、第六章が罰則です。秘密保持義務の19条、名義貸し禁止の17条・33条、報告徴取等の38条など、前の条文に違反したときの効果が41条以下に置かれています。
39条|審査委員は許可取消し・監督処分で登場する
委嘱は3人以内、学識経験者から選ぶ
財務大臣は、11条1項の許可取消しまたは34条1項の監督処分について意見を聴くため、必要があるときは3人以内の審査委員を委嘱します。審査委員は、通関業務に関し学識経験のある者から選びます。
通関業法基本通達は、原則として業界関係者を除く学識経験者から3人以内を選び、処分事例が生じて意見を聴く必要がある都度委嘱するとしています。通関士への懲戒処分では、審査委員ではなく、その通関士が従事する通関業者の意見を聴く点と区別してください。
40条〜40条の3|名称・不服申立て・権限委任
名称の使用制限は肩書だけではない
40条は、通関業者でない者が「通関業者」、通関士でない者が「通関士」という名称を使用することを禁止します。基本通達では、名札、看板、名刺、広告などの有形の表示だけでなく、口頭による表示も名称使用に含むとしています。違反は44条3号の罰則対象です。
不服申立てでは関税法91条を準用する
40条の2は、通関業法に基づく財務大臣または税関長の処分について審査請求があった場合に、関税法91条を準用します。同条は、一定の例外を除き、財務大臣が政令で定める審議会等へ諮問する手続を定めています。39条の審査委員と、不服申立て後の諮問を同じ制度として扱わないことがポイントです。
条文上の財務大臣と委任先の税関長を分ける
40条の3は、財務大臣が政令で定めるところにより権限の一部を税関長へ委任できると定めます。通関業法施行令14条には権限ごとの委任先が定められているため、問題文では法律上の主体と実際の権限行使者を読み分けます。
41条〜44条|法定刑を4段階で比較する
| 条文 | 法定刑 | 主な違反 |
|---|---|---|
| 41条 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 不正な許可、無許可営業、秘密漏えい・盗用、業務停止違反 |
| 42条 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 不正な確認、通関士の従業停止・禁止違反 |
| 43条 | 50万円以下の罰金 | 業務改善命令違反、報告・質問・検査への違反 |
| 44条 | 30万円以下の罰金 | 通関業者・通関士の名義貸し、名称使用制限違反 |
2025年6月1日に拘禁刑が施行され、第60回試験の法令基準日である2026年7月1日現在、41条・42条は「拘禁刑」と規定されています。旧教材の「懲役」という表記を現行条文と混在させないようにしてください。
41条|最も重い4つの違反
許可・秘密・停止を一つずつ対応させる
- 偽りその他不正の手段で、通関業または営業所新設の許可を受けた。
- 無許可で通関業を営んだ、または許可条件で限定された種類以外の貨物について通関業を営んだ。
- 業務上知り得た秘密を漏らし、または盗用した。
- 34条1項の全部・一部停止処分に違反して通関業務を行った。
法定刑はいずれも1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。旧記事は無許可営業を1号、秘密漏えいを4号としていましたが、現行条文では上の順に1号から4号です。
秘密漏えい・盗用だけは親告罪
41条2項は、1項3号の秘密漏えい・盗用の罪について、告訴がなければ公訴を提起できないと定めています。秘密保持義務は、通関業者、その役員・従業者、通関士がその立場でなくなった後も続きます。義務の対象は通関士の設置・審査・確認の記事で整理しています。
42条・43条|旧記事で抜けていた中間の罰則
42条は通関士の確認・処分違反
- 偽りその他不正の手段で31条1項の確認を受けた。
- 35条1項の従業停止または従業禁止に違反して通関業務に従事した。
いずれも6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。通関業者の停止違反は41条、通関士の停止・禁止違反は42条と、対象者で分けます。
43条は命令・調査への違反
- 33条の2の業務改善命令に違反した。
- 38条1項の報告をしない、虚偽報告をする、質問に答えない、虚偽答弁をする、または検査を拒み・妨げ・忌避した。
法定刑は50万円以下の罰金で、拘禁刑は含みません。業務改善命令と監督処分を分けたうえで、命令違反が43条へつながる流れを確認しましょう。
44条・45条|名義・名称と両罰規定
44条は名義貸し2種類と名称使用
- 通関業者が17条に違反して名義を他人に使用させた。
- 通関士が33条に違反して名義を他人に使用させた。
- 40条に違反して「通関業者」または「通関士」という名称を使用した。
法定刑は30万円以下の罰金です。名義貸しは資格・許可を持つ側が名義を使わせる行為、名称使用制限は資格・許可を持たない側が名称を使う行為として区別します。
45条はすべての罰則に適用されるわけではない
| 両罰規定の対象 | 両罰規定の対象外 |
|---|---|
| 41条1項(3号を除く) | 41条1項3号の秘密漏えい・盗用 |
| 42条1号の不正な確認 | 42条2号の従業停止・禁止違反 |
| 43条の各違反 | 44条2号の通関士による名義貸し |
| 44条1号・3号 | 上記以外の45条に列挙されない違反 |
法人の代表者、法人または個人の代理人・使用人・その他の従業者が、その法人または個人の業務に関して対象違反をしたときは、行為者を罰するほか、法人または個人にも各条の罰金刑を科します。旧記事のように「従業員の違反なら原則すべて」と一般化せず、45条に列挙された条文・号だけを確認してください。
過去問は「主体・違反・刑・両罰」で復習する
罰則の選択肢は、次の4項目へ分解すると誤りの理由を特定しやすくなります。
- 主体は通関業者、通関士、無資格者、法人の従業者のどれか。
- 違反は許可、確認、秘密、停止・禁止、命令、調査、名義、名称のどれか。
- 法定刑は拘禁刑を含むか、罰金額はいくらか。
- 45条の両罰規定に列挙されているか。
演習には税関の第59回通関士試験問題を使い、2026年7月1日現在の条文と照合してください。固定回数を暗記するより、誤った選択肢を上の4項目へ戻して根拠条文を確認する方法が実用的です。
まとめ|41〜45条を一続きで判断する
41条は1年以下・100万円以下、42条は6月以下・50万円以下、43条は50万円以下、44条は30万円以下です。拘禁刑を含むのは41条と42条で、秘密漏えい・盗用だけは告訴がなければ公訴を提起できません。
45条の両罰規定は全違反へ一律に適用されません。雑則の審査委員、名称使用、不服申立て、権限委任とあわせ、主体・違反・法定刑・両罰の4点で見直しましょう。前提となる監督処分・懲戒処分はシリーズ第4回で確認できます。


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