通関士試験の合格発表が目前に迫り、期待と不安が入り混じる日々をお過ごしのことと思います。
「結果が出るまで何も手につかない」
「もし合格していたら、次は何をすればいいんだろう?」
「万が一ダメだったら、どうしよう…」
多くの受験生が「結果を待つ」だけの期間を過ごす中、実はこの発表前の「待機期間」こそが、合否判明後のスタートダッシュを決定づける最も重要な「戦略的準備期間」です。
合格シナリオでも、不合格シナリオでも、発表直後から始まる手続きや分析には「今しかできない準備」があります。
この記事では、発表を待つ「今」、あなたが具体的に準備すべきことを、合否両方のシナリオ別に徹底解説します。この記事を読めば、どちらの結果になっても迷わず次の一歩を踏み出せます。
(※なお、発表日当日の試験結果の分析やボーダーラインについては、通関士試験 合格発表速報の記事もご参照ください。)
【重要】この記事の対象となる方
この記事で紹介する準備内容は、あなたの現在の状況によって「今すぐすべきこと」が異なります。
- 【合格シナリオ】(通関士登録の手続き)
- この記事で解説する「通関士確認届」の手続きは、「通関業者」に現在お勤めの方、または「通関業者」への就職が内定している方のみが対象です。
- メーカー、商社、学生の方などは、通関業者に所属しない限りこの手続きの対象外となりますので、【不合格シナリオ】の準備のみご参照ください。
- 【不合格シナリオ】(次年度への分析)
- 受験生全員が対象です。特に「得点開示」に関する準備は、来年の戦略を立てる上で非常に重要です。
【合格シナリオ(通関業者 勤務/内定者向け)】「通関士」登録への最短準備
※このセクションは、「通関業者」にお勤め(または内定)の方のみが対象です。
合格を確認した瞬間から、あなたは法的な「通関士」になるための行政手続きをスタートさせる必要があります。勤務先の通関業者が行う「通関士確認届」という手続きが鍵となります。
この手続きをスムーズに進めるため、以下の準備を「今すぐ」始めましょう。
今すぐすべき最重要アクション:「2つの鍵」を確保せよ
合格発表後の手続きを最短で進める(フライングスタートする)ためには、「今」準備しなければならない重要な書類が2つあります。 どちらか一方でも欠けると、スタートダッシュはできません。
アクション1:【最重要】「受験票(『A』片)」を探し出し、厳重に保管する
「試験が終わったから」と、受験票を捨てていませんか?
もし捨ててしまっていた場合、合格していても、合格証書の原本が郵送されてくるまで(数週間)、「通関士」登録の手続きを一切開始できません。
- 理由: 合格証書(原本)が届く前に「通関士確認届」の手続きを行う場合、税関HPの速報だけでは根拠にならず、「通関士試験受験票(税関様式B第1280)の『A』片の写し」を添付書類として提出する必要があるからです。(税関様式B第1320号 注記より)
- 今すぐすべきこと: 今すぐ「受験票」の現物を探し出してください。 合格発表日にコピーして勤務先に提出できるよう、絶対に紛失しない場所に厳重に保管しましょう。
アクション2:本籍地の「身分証明書」の郵送申請準備をする
手続きにおけるもう一つのボトルネックが、添付書類の「身分証明書」です。
注意!:これは運転免許証やパスポートのことではありません。
- 正式名称: 「身分証明書」または「身元証明書」
- 内容: 法律上の欠格事由(例:成年被後見人、破産者でないことなど)に該当しないことを証明する公的書類です。
- 取得場所: あなたの「本籍地」の市区町村役場(役所)
現住所と本籍地が異なる人は、郵送で取り寄せる必要があります。郵送の場合、申請書の準備、手数料(定額小為替の購入)、返送期間を含めると、入手までに1〜2週間かかることもあります。
- 今すぐすべきこと:
- 本籍地の確認: 自分の「本籍地」を正確に確認します。
- 役場のHP確認: 「(あなたの本籍地) 役所 身分証明書 郵送」などで検索し、本籍地の市区町村役場の公式ウェブサイトで、郵送申請の方法を徹底的に調べます。
- 申請準備: 申請書をダウンロードして下書きし、手数料(定額小為替など)や必要なもの(返信用封筒、本人確認書類のコピーなど)をすべて確認しておきます。
合格発表日(11月11日)の朝、合格を確認した瞬間に「受験票のコピー」を準備し、同時に「身分証明書の郵送申請」を投函できるように準備万端にしておきましょう。
勤務先(通関業者)が行う「通関士確認届」とは?
「通関士確認届」(税関様式B第1320号)とは、勤務先の通関業者が「この人を(わが社の)通関士として業務に従事させたいので、欠格事由がないか確認してください」と税関に届け出るための書類です。(通関業法第31条)
この届出は、現在NACCS(ナックス)というシステムで電子的に行われます。その際、雇用主は以下の書類を添付する必要があります。
- 通関士試験合格証書の写し
- (→無い場合、代わりに「受験票『A』片の写し」でフライングスタートが可能)
- 身分証明書(または身元証明書)
- (→郵送申請の場合、入手まで時間がかかるため事前準備が必須)
- 通関業法に該当しないことの宣誓書
- (→通常、会社がひな形を用意)
- 写真
- (→事前に準備しておくとスムーズ)
この2つの重要書類(受験票、身分証明書)を合格と同時に提出できるかどうかが、最短での「通関士」登録を左右します。
なお、今回解説した「確認届」を含め、合格後に通関士として正式に登録されるまでの全体像については、以下の記事で詳しく解説しています。
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【不合格シナリオ(受験生全員対象)】「次」への戦略的準備
万が一、結果が振るわなかった場合も想定し、準備しておくことが賢明です。
結果判明後に落ち込むのは仕方がありません。しかし、大切なのはそこから即座に「次」のアクションに移ることです。
落ち込むのは一瞬。即座に「敗因分析」へ
不合格だった場合に最初に行うべきは、感情的になることではなく、冷静な「原因の究明」です。
- 勉強時間は足りていたか?
- 学習方法は正しかったか?
- テキストや教材は自分に合っていたか?
この分析を客観的に行うために、最も価値のあるデータが「あなた自身の得点」です。
「今」調べておくべき「個人情報開示請求」の手続き
「あと1点で不合格だったのか」「それとも、特定の科目が壊滅的だったのか」を知ることは、来年の戦略を立てる上で決定的に重要です。
この自分の得点を知るための正式な手続きが「個人情報開示請求」です。
巷で「成績照会」と呼ばれることもありますが、これは法律(個人情報保護法)に基づく正式な権利であり、申請期限は合格発表から1〜2週間といった短期間ではありません。
- 正しい申請期限: 試験実施の翌年3月31日まで
- 手続き: 税関のウェブサイト(「個人情報保護」や「開示請求」の窓口)で、所定の申請書(開示請求書)を入手し、必要事項を記入して提出します。
- 手数料: 300円の収入印紙などが必要です。
【今すぐすべきアクション】
- 心構えを持つ: 万が一の番号がなかった場合に、即座に「分析モード」に切り替える心構えを「今」持ちます。
- 手続きの確認: 「今週中」に、税関のウェブサイト(「個人情報保護」や「開示請求」のセクション)を熟読し、「個人情報開示請求」の具体的な申請方法、必要な書類、手数料(収入印紙の額)を正確に調べておきます。
- 戦略オプションの検討: もし不合格だった場合、来年度はどのような戦略をとるか(例:独学から通信講座に切り替える、苦手科目を集中的に補強する)をぼんやりとリストアップしておきます。
申請期限は「翌年3月31日まで」と余裕はありますが、結果判明後にすぐ動けるよう、手続き方法だけは「今」把握しておくことが、次年度へのスムーズな再スタートを切る鍵となります。
開示請求で得られた客観的なデータ(得点)をもとに、来年の学習戦略を見直しましょう。以下の記事が、その判断の助けになるはずです。
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まとめ:発表前の1週間は「待機」ではなく「準備」の期間
通関士試験の合格発表を待つこの1週間は、結果をただ待つだけの「受動的な待機期間」ではありません。
- 合格シナリオ(通関業者 勤務/内定者向け)
- 法的な「通関士」への地位移行を最短で実現するため、「受験票の確保」と「本籍地の身分証明書」という2つの鍵を「今」準備すべき期間です。
- 不合格シナリオ(受験生全員向け)
- 次年度の合格に向けた「敗因分析」の核となる「得点」を知るため、「個人情報開示請求」の手続き方法を「今」正確に把握しておくべき準備期間です。
発表の日は、ゴールであると同時に、次のプロセスを開始するための「スタートの号砲」です。
どちらの結果であっても、あなたが最速のスタートダッシュを切れるよう、この記事が「今、すべきこと」の明確なコンパスとなることを願っています。





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