輸入してはならない貨物とは?13分野・税関の措置・罰則を整理

港の税関検査場と輸入禁止貨物の分類を表したアイキャッチ 関税法等

「輸入してはならない貨物」は、関税法第69条の11第1項の1号から10号までに定められています。税関の案内では、1号の2・5号の2・9号の2を分けて、13分野として整理されています。

通関士試験では、品名だけでなく、どの号に当たるか、税関長が没収・廃棄または積戻しを命じられるか、第7号・第8号の通知とどう違うか、知的財産侵害物品の認定手続は何かまで区別することが重要です。

この記事は、第60回通関士試験の法令基準日である2026年7月1日現在の関税法令と税関公表情報に基づいて整理します。

輸入してはならない貨物は13分野

条文の号数と税関の13分野は、数え方が違います。条文は「1号の2」などを枝番として扱うため1号から10号までですが、税関は枝番も独立させて13分野と案内しています。

条文輸入してはならない貨物
1号麻薬・向精神薬、大麻、あへん・けしがら、覚醒剤(覚醒剤原料を含む)、あへん吸煙具
1号の2指定薬物。ただし、医療等の用途に供するために輸入するものを除く
2号拳銃、小銃、機関銃、砲、これらの銃砲弾、拳銃部品
3号爆発物
4号火薬類
5号化学兵器禁止法に規定する特定物質
5号の2感染症法に規定する一種病原体等・二種病原体等
6号貨幣・紙幣・銀行券、印紙・郵便切手、有価証券の偽造品・変造品・模造品、偽造カード等
7号公安または風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品
8号児童ポルノ
9号特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権、育成者権を侵害する物品(9号の2を除く)
9号の2海外の事業者が国内の事業者でない者へ郵送等する、商標権または意匠権を侵害する物品
10号不正競争防止法所定の行為を組成する物品

条文の正確な文言は、e-Gov法令検索「関税法」で確認できます。全体像の確認には、税関の「2001 輸入してはならない貨物とは」が便利です。

試験では「対象・措置・刑罰」を分ける

13分野を暗記しただけでは、措置や刑罰の問題で混同します。次の3層を分けて読んでください。

  1. 対象:69条の11第1項のどの号か
  2. 水際措置:没収・廃棄、積戻し命令、通知、認定手続のどれか
  3. 刑罰:109条の第1項、第2項、または対象外か

「輸入禁止だからすべて同じ処理になる」と覚えるのは危険です。とくに第7号・第8号と、第9号の2は、ほかの号との違いが問われやすい部分です。

税関長の措置は号によって異なる

1〜6号・9号・9号の2・10号

税関長は、1号から6号まで(枝番を含む)、9号、9号の2、10号の貨物を、没収して廃棄し、または輸入者に積戻しを命ずることができます。条文は「できる」と定めており、あらゆる場合に必ず没収されるという意味ではありません。

7号・8号

公安・風俗を害すべき物品と児童ポルノについて、税関長は、該当すると認めるのに相当の理由があるとき、その旨を輸入者へ通知します。1〜6号などに対する69条の11第2項の没収・廃棄または積戻し命令と同じ規定ではありません。

区分条文上の基本措置
1〜6号、9号、9号の2、10号税関長が没収・廃棄、または積戻しを命ずることができる
7号・8号該当すると認めるのに相当の理由がある旨を輸入者へ通知する
9号・9号の2・10号の疑義貨物知的財産侵害物品等に該当するか認定手続を行う

模倣品の個人輸入は9号の2を確認する

2022年10月1日から、個人使用目的であっても、海外の事業者から郵送等で送られる商標権または意匠権を侵害する模倣品は輸入できません。国内の受取人が事業者でない場合を9号の2で捉えます。

ただし「個人使用なら知的財産権侵害品はすべて9号の2」と一般化してはいけません。9号の2は、送り手・受取人・送付方法と、商標権または意匠権という対象権利が限定されています。税関の模倣品の水際取締り強化の案内も併せて確認してください。

9号と9号の2の違い

論点9号9号の2
対象権利8種類の知的財産権商標権・意匠権
典型場面権利侵害物品の業としての輸入など海外事業者から国内の非事業者への郵送等
個人使用権利ごとの侵害要件を確認要件を満たせば個人使用でも輸入不可
関税法109条第2項の対象対象外

9号の2の貨物は輸入禁止で認定手続の対象ですが、関税法109条・109条の2の刑罰対象から除かれます。税関も、輸入者に事業性がなければ今回の規制強化による罰則対象にはならないと説明しています。

認定手続は「疑義・通知・意見証拠・認定」

税関が知的財産侵害物品に該当すると思われる貨物を発見した場合、該当するかどうかを認定する手続を行います。単に見た目だけで確定する手続ではありません。

認定までの基本的な流れ

  1. 税関が侵害疑義貨物を発見する
  2. 輸入者等と権利者へ認定手続の開始を通知する
  3. 当事者が意見・証拠を提出する
  4. 税関が侵害物品に該当するか認定し、結果を通知する

輸入者が「該当しない」と争う場合、開始通知書を受け取った日から10日(土日・休日を除く)以内に争う旨の申出書が税関へ到着するよう提出します。実務上の手続は、税関の認定手続開始通知書を受け取った方への案内で確認できます。

侵害と認定された後の自発的処理

税関が没収するまで、輸入者は、廃棄・滅却、侵害部分の切除等の修正、積戻し、権利者からの輸入許諾、任意放棄などの自発的処理を検討できます。ただし、貨物や輸送方法によって使えない処理があります。

  • 積戻しには輸出貿易管理令による輸出承認が必要で、権利者の同意が要件
  • 商標権、著作権、著作隣接権を侵害すると認定された貨物は輸出承認されない
  • 国際郵便物では、廃棄・滅却・積戻しを自発的処理として行えない

したがって、「侵害品は自由に返送できる」「必ず輸入者の費用で廃棄を命じられる」と一律に覚えないようにしましょう。

関税法109条の刑罰は2区分

2026年7月1日現在、刑名は「懲役」ではなく拘禁刑です。刑法等改正に伴う用語変更を反映して覚えてください。

対象法定刑予備
1号〜6号10年以下の拘禁刑、3,000万円以下の罰金、または併科5年以下の拘禁刑、3,000万円以下の罰金、または併科
7号〜10号(9号の2を除く)10年以下の拘禁刑、1,000万円以下の罰金、または併科5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金、または併科
9号の2関税法109条の対象外同左

109条は未遂も既遂と同様に扱います。法定刑と対象号は、税関の「関税法の罰条」でも確認できます。罰金額の違いについて、条文や公式資料にない独自の「序列」や心理的理由を作って説明しないことも大切です。

他法令の輸入規制と混同しない

関税法69条の11のリストだけが、輸入できない物品のすべてではありません。植物防疫法、家畜伝染病予防法、医薬品医療機器等法など、他法令にも輸入禁止・規制があります。

また、原産地について偽った表示または誤認を生じさせる表示がある貨物は、関税法71条によりそのままでは輸入を許可されませんが、表示の抹消・訂正または積戻しという仕組みです。69条の11の「輸入してはならない貨物」と同じリストへ入れないでください。

過去問は5段階で判定する

1問ごとのチェック順

  1. 条文:69条の11第1項の何号か
  2. 要件:医療等用途、送り手・受取人、権利の種類などの限定はあるか
  3. 措置:没収・廃棄等か、通知か、認定手続か
  4. 刑罰:109条1項・2項・対象外のどれか
  5. 別制度:他法令や71条との混同はないか

第60回通関士試験の関税法等は11時から12時40分までの100分で、出題範囲は2026年7月1日現在で施行されている法令・告示・通達です。最新の受験案内は税関の第60回通関士試験受験案内(PDF)で確認できます。

まとめ

  • 関税法69条の11は1号〜10号、税関の案内では枝番を分けた13分野
  • 1〜6号・9号・9号の2・10号と、7号・8号では条文上の措置が異なる
  • 個人向け模倣品の9号の2は、商標権・意匠権と送付関係の要件を確認する
  • 9号の2は輸入禁止・認定手続の対象だが、関税法109条の刑罰対象外
  • 刑名は拘禁刑。対象・措置・刑罰を分けて覚える

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